obatahi

No. 072 2026.10.10

芳名

穏田神社に、新鳥居建立奉賛者御芳名と題したステンレスの板が立っている。

右上に赤い三つ巴、末尾に平成二十四年六月吉日、敬称略。金弐百萬圓が一人、金壱百萬圓が四つ。森ビルとラフォーレ原宿は金五拾萬圓の段にいる。段が下るほど名前は隙間なく並ぶ。

磨かれた板の金五萬圓の段に、白いシャツで携帯を構えた姿が重なって映っていた。

名を残す権利は、昔から、出した額の順に配られてきた。

二日前の十八時、東京駅から新橋へ続く高架下、飲み屋が途切れずに並んでいた。コンクリートに酒の染み込んだ匂いがして、通気口から煙が漏れていた。

会計を済ませた会社員が、男四人と女二人、一人ずつ店から出てくる。年長の男が言った。

「タニグチはどこ行った?」「トイレです。タニグチさんうるさいから、置いてきましょう」「ああ、タニグチうるさいからな」

タニグチさんは、絶対に置いていかれない。

nehan