冷たいまま
上が緑で、下が白。もう一本は、上が白で、下が緑。抹茶ラテが二本、ケースに固定されて、零れそうにはない。それを持った女性が、走っている。
寒い日だった。頬は紅潮していた。信号が変わる前に、届けなければならない。アイスラテが、温くならないように。
冷たいものを冷たいまま届ける約束を、この街は、運ぶ人の体温で買っている。
左手の親指の先に、溝がある。ささくれではない。甘皮でもない。円弧を描いた、細い溝。
爪切りを当てる。角度を変えて、また当てる。刃が出入りする、皮膚の断片が落ちていく。
親指には、ケースがない。
円弧は見る影もなく、不規則な波になっていた。