遁走状態
建物が人格を規定している。
介護付有料老人ホームは高級マンションのようなロビーを構え、車椅子が縦に並べてあった。オフィスビルの一階のコンビニで朝にその日の栄養を補給し、一度出て、その上にある自分のオフィスに向かう。建売住宅の正確に区分けされた敷地に、ドアは思い思いに装飾している。
建物から遁走すると、近所には責任の欠如と見られる。
袋小路に入るのも、ルールに乗っている。
歯科医院だった建物の前を通る。看板には蔦が絡みつき、植え込みの草木は枯れ切っている。庭に停められた車のフロントガラスには、落ち葉が溜まっている。
二階の屋内に、ゆったりとしたTシャツが干してあった。緑、黄、青。どれも色が濃く、湿って見えた。
今日は雨だ。
人は住んでいた。